ルイヴィトンダミエグラフィットセカンドバック
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null「そうね」  と妹が首をかしげてのぞきこみ、 「振られて来たんでもなさそう……」  と笑った。佐伯のボトルを出して手早くオンザロックを作る。 「それどころか前祝いさ」 「あら、結構ね」 「大物を仕とめたよ」  佐伯は弓をひく恰好《かつこう》をした。右手の、矢じりを持ったつもりの指をパッと放して見せると、佐伯と同じ年だという姉が、すかさず正面の棚のいちばん上に飾ってある明治神宮の破魔矢《はまや》を指さして、 「外《はず》れたわよ。へたねえ」  と言った。 「莫迦《ばか》言え、外れるもんか」  佐伯は自分だけにしか判らない答えをした。 「外れたらあしたから飯の食いあげだ。わがチームは解散だよ」  島村専務の顔を思い出しながらウイスキーを舐《な》める。 「そうか。ここでのぼせちゃブチこわしだな。満貫を聴牌《テンパ》ったんだ、ヤミテンに気をつけよう」 「なんだ、また接待マージャンだったの」  妹のほうは勝手に納得しながら、ピーナッツの皿を佐伯の前に置いた。佐伯は無意識に手を伸ばし、前歯でピーナッツを噛んだ。  寒川正信とは、今夜笠原に引き合わせてもらったばかりだった。暴漢が襲った件に笠原も何らかのつながりを持っていたと仮定すると、寒川は案外笠原を通じて幾分事情を知っていると思い込んだのかもしれなかった。だとすると、仕とめたと言って喜ぶのはまだ早いような気がするのだ。