ルイヴィトングラフィットバッグ
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[Smile You] ショルダーバッグ 縦型 市松柄 【ブラック/ブラウン】
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[Smile You] ショルダーバッグ 縦型 市松柄 【ブラック/ブラウン】 
null 黒いスーツの女は私の先に立って奥へ進んで行った。一度右へ曲がり、更に左へ曲がるとその女は立ちどまり、壁のボタンを押した。  私は呆気《あつけ》にとられていた。何とそれはエレベーターだったのである。喪服のような黒いスーツを着た女のあとからエレベーターに乗ると、その小さな函《はこ》は思いがけぬ勢いで上昇をはじめた。崖にへばりつくように見えた二階だての建物は、事実|崖《がけ》の中へ一部が食い込んでいて、エレベーターがその崖の内側を貫通しているのである。谷口が上の部屋と言ったから、二階へ連れて行かれるとばかり思っていたが、崖の上へ運ばれているのだった。 「どうぞ」  エレベーターがとまり、ドアがあくと、女は叮嚀《ていねい》な物腰でそう言い、私を先に外へ出した。  すぐ左に大きなガラス窓があり、東京港が見えていた。一気に高輪《たかなわ》の台地の上へ出てしまっているのだ。 「こちらへ」  あとから出た女が、また先に立って歩きはじめた。下の建物の内部は古びて重厚な感じであったが、そこはま新しいホテルのようだった。女は焦茶《こげちや》色のカーペットを敷いた短い階段を登ると、大きなソファーの並んだ応接室のような部屋へ入った。 「こちらでお待ちください」  女はそう言い残すと、外へ出てドアをしめた。ソファーの坐《すわ》り心地は体を吸いとられそうな感じで、私はなかなか落着けなかった。  十分間ほど一人きりでその部屋にいると、いきなりドアがあいて谷口が現われた。 「やあ、待たせてしまったね」  例の澄んだ瞳《ひとみ》と邪気のない笑顔だった。 「いったいどうなってるんだ」  私はなじるように言った。 「何のことだい」  谷口はちょっとおどけたように尋ね返して来た。 「ルンペンの王子さまがいつの間にかこんなどえらい所でわが物顔に振舞ってる。いったいあれからどんなことがあったんだ」  谷口はすぐには答えず、部屋の隅《すみ》の電話で紅茶を持って来るように命じた。