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ルイビトン草間弥生財布編集

「おろ?」  風向きが変わった。女が突然、単身楽団を背負ったのだ。 「ほほう、そうきますか」  無論、公社の認可を得ずに公共の場で神曲を奏《かな》でることは、基本的に禁じられている。例外となるのは、緊急対処の場合だけだ。  そしてこの場合、たしかに状況は彼女にとって『緊急』だ。  よし、やっちまえ嬢《じょう》ちゃん。  俺がそう思ったのと同時に、彼女の細い腕が背中に回って、金属ケースの側面を叩《たた》いた。  ばじゃり、と金属音をたてて単身楽団が展開する。  各所のシャッターや蓋《ふた》が開き、内部から何本もの金属アームが飛び出したのである。  それぞれのアームの先端には、表示装置や制御スイッチが並んでいる。それらの機器を金属アームが装着者の正面に配置してゆく様子は、まるで金属製のクモが背後から襲いかかる様子を連想させる。  本体から広がる扇型《おうぎがた》の黒い物体は、一組のスピーカーである。  変形の最後に、金属アームが、女の胸元に主制御楽器を滑り込ませた。  金色の、フルートだった。  二人の男が、わずかに後ずさる。  俺の方も、興味津々《きょうみしんしん》だ。  彼女の神曲に応じて姿を見せるのが、どんな精霊なのか。俺としては、美しい上級精霊の女闘士が現れて精霊雷で無法者を叩きのめす、なんて場面を希望しちまうね。  だが、 「あだ……」
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