ルイヴィトンジッピーウォレット偽物
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null「マメなんですねえ」 「おはずかしい」  下町はおどけて見せた。 「ふつうのアパートじゃこんなことさせてくれませんわ。それに、あたしなんか不器用ですから」  清子の言いかたはどことなくしんみりした感じになった。 「その後野崎さんからは……」  下町は一番気になることを、さりげなく尋ねた。 「何も」  清子はその話を避けるように短かく言い、 「これ、何か由緒《ゆいしよ》ありそう」  と、また笑いを含んだ声で古ぼけた安楽椅子に坐った。 「由緒なんかありませんよ。この商売をはじめたとき、古道具屋で見つけて何となく買ってしまったんです。あの頃は僕も探偵という仕事に、まだ幾らか夢を持っていたようだな」 「あら、どうして……」 「探偵と安楽椅子《ロツキング・チエアー》にはほんの少しつながりがあるんですよ。安楽椅子探偵と言ってね。坐ったままで難事件を解決する名探偵が、推理小説のほうにはあるんです」 「あら、そうなんですの」 「ええ。昔、僕も散々推理小説を読んだものですからね。でも、実際にやってみると、日本の探偵には推理なんて要らないようですよ。ただコツコツと事実を調べあげて依頼者《いらいしや》に報告するだけです」 「そんなこともないでしょうけれど、そりゃまあ、小説の中の名探偵のようには行かないでしょうね」 「あなたはミステリーなどを読むんですか」