シャネルキャビアスキンチェーンバック
null
null「おれは、何もしていない。嘘だ。それは何かの間違いだ!」 「言い逃れをするな。おまえらを蹴散らした弟から、ちゃんと報告をきいた。取立屋どもに女を凌辱させるなど、薄汚ないことをしやがる」 「何を言うか。亜希子とおまえはもう離婚したんだろ? それならその女がどうなろうと、おまえの知ったことじゃない。勝手な難くせをつけるな」 「ほざいたな。別れた女なら、泣き寝入りしろというのか。離婚は離婚。好きな女は好きな女だ。その女が暴行されたとあっては、許すことができん」 「そうか……割れたぞ。まだおまえがそんなに惚れてるのなら、やはりあの離婚は猿芝居の偽装離婚というわけだ。詐害行為で、訴えてやる!」 「ぬかすな。それとこれとは、話が違う。おれは亜希子のかわりに、仕返しにきてやったんだ。おい、孝子さん」  ひッ、と孝子は逃げようとした。その足をぐいと掴み、引きよせた。 「やめて!」  孝子は、本能的に身の危険を感じて、逃げようとした。  ふとんの上である。慎平はその足を掴んで、引き倒した。孝子は抗(あらが)った。のしかかって、鳩尾(みぞおち)に拳を入れた。孝子は白眼をむいた。鈍い呻きを洩らし、ぐったりして、動かなくなった。  慎平の胸に今、怒りが燃えている。やられたら、やり返す。こういう局面は、それでゆくしかないのだ。 「やめろ! 孝子に乱暴するのはやめろ!」  叫んで、掴みかかってきた宗田の脾臓に靴先を蹴り込むと、宗田の巨体はどうと倒れた。ほとんど、悶絶寸前である。それぐらいでは収まりきれない、暗く吹き荒れるものが、亜希子を汚されたことを知った慎平の胸に、いま、風の唸(うな)りのようなものをたてている。  襟首をぐいと掴みあげ、締めた。「どうだ。惚れた女を乱暴されるのは、おまえでもいやか」 「真相を話す。孝子をいたぶるのだけはやめてくれ」 「真相? 成城の家に押し込んで、亜希子を問い詰めたあげく、犯した。そのことに、裏の真相でもあるというのか」 「そうだ。あの押し込みは、おれたちの本意ではなかった。おれたちは焚(た)きつけられたんだぞ」 「焚きつけられた? 誰にだ?」