pole1バイオ濃厚洗剤酵素配合2kg 入泥汚れ専用洗剤
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null のび放題の植え込みから、高くなった楓《かえで》が幹を見せていた。ひと抱えの太さになっている。踏み石の上に分厚く葉を落としていた。  ドアの錠は固かった。ノブを持ち上げるように回して初めて、音をたてた。内側のノブに電力会社が残していったパンフレットが吊るされていた。  ブレーカーのスイッチを手探りで捜した。記憶は時に、ひどいまちがいをおかす。ブレーカーは、そこではなく台所にあったのだ。  ブーツのまま上がると、マッチを擦った。  明りをつけると、庭に面した窓に木製の雨戸がたてられているのが見えた。そうして雨戸をたてきった家には妙に圧迫感がある。  最初に殺虫剤の匂いを嗅《か》いだ。  台所に立つと、面した三つの部屋が見渡せた。右端が和室だが、畳はすべてとりはらわれている。中央の板張りの洋間にカバーをかけられたソファが幾つかあった。スプリングは錆びついて使い物になるまい。おそらく、家や肉体だけではなく、この世のすべてのものが、使われなければ駄目になる運命を負っているのだろう。  あらためて彼は思った。  左側の部屋だけに、人の気配があった。ひと組の寝具と、一枚の額に入った絵、そのふたつがきちんと壁ぎわにおかれている。絵はもとからそこにあったものだろう。寝具はつい最近、彼が運びこませたものだ。  彼が動くと床はきしみを上げた。張ってある板が沈む感触がある。根太《ねだ》板が腐っているようだ。  寝具のおかれた部屋の入口で、彼はブーツを脱いだ。バッグを最近しかれたと思われるパンチカーペットの上におろし、あぐらをかいた。虫の音が耳に入ってくる。  電話のベルも、ドアの開閉も、話し声も、コンピューターのキイを叩《たた》く軽い音も、何も聞こえてはこない。立ち上がると、道に面している方の窓を開いた。雨戸を戸袋に押しこむ。庭に面する側もそうした。今ではまず見られない、ねじこみ式の鍵がかかっていた。  ねじの頭を回し、螺旋《らせん》からゆっくりと鍵がぬけ出てくるに従い、レールの上でガラス戸がかたかたと揺れる。  新たな空気が入りこみ、殺虫剤の匂いが凝固していた時間と共に出ていく。  シーツにくるまれた寝具をほどくと、マットレスに敷布団、毛布と数枚のシーツがあらわれた。それらを順番に広げ、しき終えると、彼は洋服を脱いだ。シャツをジーンズを、トランクスを、脱ぎすてる。  部屋を出て、庭に立った。彼と同年齢の青桐《あおぎり》が厚い葉を繁らせていた。小刀で削った記憶がある。  裸足《はだし》に土と草の弾力を感じながら、彼は青桐の根元に放尿した。  大きく息を吐いて、空を仰いだ。半分に欠けた月が、すぐ真上にあった。