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null 数字上は一・六リッター八十二馬力という非力な割りに速いのは、ボディが軽いためと、さまざまな補機類をつけたままエンジン出力を計るドイツ式DIN馬力表示だからだ。  前輪駆動の割りには、ハンドルはそう重くない。地下駐車場を出た恵美子のアウディは、|飯《いい》|倉《ぐら》ランプから首都高速に乗った。  |赤《あか》|坂《さか》トンネルを抜けた頃から道は空いてきた。|新宿《しんじゅく》ランプ出口の先のきつい左廻りコーナーを、恵美子はタイアを鳴かせながら百二十キロ近くのスピードで通過する。車がアウトにふくらみすぎかけると、アクセルをゆるめてやる。前輪駆動のお蔭でインに車首は|捲《ま》きこまれる。  あまり急激にアクセルを放すと転倒する|怖《おそ》れがあるが、恵美子の趣味の一つはモーター・スポーツであり、サーキット・レースや山岳ラリーで幾多の実績を持っている。  アウディは首都高速からそのまま中央高速道に入り、|調布《ちょうふ》インターで降りた。  |甲州街道《こうしゅうかいどう》から|三《み》|鷹《たか》のほうに車を向ける。|深《じん》|大《だい》|寺《じ》の|脇《わき》を通り、|神代植物園《じんだいしょくぶつえん》の裏のほうに廻る。  そこに、広い敷地を持った古代|武蔵《む さ し》|野《の》記念館があった。メイン・ビルは三階建てで、その一階が展示場になっている。  広い駐車場に十数台の車しか見当らないのは、正門に示された入場料一人三千円という高い料金に|怖《おそ》れをなして、客は一人も入ってないのであろう。したがって、そこに|駐《と》まっている車はすべて職員のものだ。  正門の前で一度車を|停《と》めた恵美子は、係員に、考古学者や動物学者などに記念館が無料で発行しているパスを示した。  係員が頷き、守衛が|鉄《てっ》|柵《さく》の門を開く。恵美子はまだ二百台分以上も余地がある駐車場にアウディを乗り入れた。  一階の展示場には、武蔵野の動物の化石や|剥《はく》|製《せい》、昆虫標本や植物の種子などが飾ってあった。古代に武蔵野に住んだ人々の生活のありさまを復元した模型なども見える。観客は一人も見当らなかった。      三  恵美子は「立入り禁止」の札が階段を|遮《しゃ》|断《だん》する鎖からぶらさがっているのを無視し、鎖を身軽にまたぐと、二階に登っていった。  二階の壁や天井には、監視用のモニターTVのカメラがところどころに顔を|覗《のぞ》かせている。  恵美子は二階の廊下の突当りの部屋のドアをノックした。 「十五分も早すぎるが、まあいい、入りなさい」