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 「あと、もう一日だけ猟日を延ばしてけれ」と組頭は床に手をついて頼んだ。酔いにまかせ、和人たちがいつも使う手なのだ。  「ようし」と頷ずいて、サクサンはにょっきり立ち上がった。「ただし、おめえの命と引き替えにな」彼はこう言って鉄砲の砲先を組頭の額に突きつけた。 12  オコシップは家のすぐ裏の茅原を中腰の恰好で兎の足跡を追いかけていた。雪の上の足跡は、いま残したばかりのほやほやだった。彼は朝飯前の肩ならしと思って家を出たのだが、足跡は茅原をぐるぐる回って、どこまで追っても止め足(足跡をくらますために、大きく跳びはねる)がなかった。彼はさんざん歩き回ったあげく、丘を登ってとうとう峠の上に出てしまった。  昨日まで赤錆(さ)びていた原野は一面雪に覆われていた。いつもなら十勝(とかぷち)川の氷が張りつめてから雪がくるのだが、今年は様子が違っていた。粉雪が少しずつ降り積もるというのではなく、どかっという降り方で、ひと晩に腓(こぶら)のあたりまで積もったのである。十勝川が一本の黒い筋となって原野の中を大きく蛇行していた。  オコシップは原野を右手に見て、なおもしぶとい兎を追い続ける。足跡は三つになり、五つになり、入り乱れてどこまでも続いていた。細い小川を跳び越えて白樺林に入ると、狐や鼬(いたち)の足跡も混じって獣たちの乱舞が始まる。新雪が四方に飛び散っていた。家の裏で見つけた足跡はここでついに紛(まぎ)れてしまった。  彼の腹はぐうと鳴ったが、このままでは帰れない気持ちになり、新しい獣の足跡を探して榛林(はんのきばやし)に踏み込んだ。ここを突き抜ければ浜コタン裏の丘陵に出る。兎は気まぐれに横にそれたり放尿をしたりして、ゆっくり跳び進む。足跡の間隔が少し乱れたと思っていると、突然、こんもり繁ったサンナシの藪から雪煙を吹き上げて白い塊が跳び上がった。同時にオコシップが構えた銃口から火を吹き、兎はさらに大きく跳び上がって頭から雪の中に突きささった。  「おらが先だ」  繁みの反対側から走り出てきたヤエケが、兎の耳をつかんで持ち上げた。  「たった今、ここへ追い込んだんだ」  ヤエケは厚司の裾を跳ね上げるように歩いて、自分が追ってきた証拠の足跡をオコシップに指し示した。二足跳びの大きな歩幅で、足跡はたしかに繁みの中に跳び込んでいた。枯草の上に雪が浮いたように載っている。その奥の方にオコシップは小刻みに震えるもうひとつの白い塊を見た。彼は鉄砲の筒先を上げてヤエケに合図した。  「腰を抜かしやがったな」  ヤエケは繁みの中を覗きこんでくっくっと笑い、狙いを定めて近い距離から撃ち込んだ。兎は強い衝撃を受けてひっくり返ったまま、四本の足をひくひく動かしただけで絶命した。  二人は恨みなく肉付きのいい兎をぶら下げ、山間(あ)いの小川に沿って山を下りた。陽光が初雪に照りかえって眩ゆかった。部落はすっかり冬の装いに変り、子供たちは手橇を曵き回し、雪をのせた段々屋根からゆらゆら煙が立ち昇っている。  ヤエケの家の前までくると、
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