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2015-02-05 17:04    chanelバッグベージュ
 佐智はますます変な顔をした。 「好きだからよ。自分が思うとおり何でも吹けるわ」  入口近くで、年寄りらしい優しい声がして少しずつ光が侵入してきた。外の風景が映画のスクリーンのように流れた。子供たちは歓声をあげた。家畜の体臭や炭酸ガスがどんどん逃げていき、新鮮な空気と入れかわった。佐智も伸びあがってスクリーンを見た。  斑雪《まだらゆき》が黄色い地面を鹿《しか》の毛皮のように彩《いろど》っている丘が見えた。丘には一本の樹木もなくて、長い石の城壁がゆるくカーブする尾根に沿って建っていた。城壁は佐智が貨車から見通せるかぎりの空間を、うねうねと昇っていた。石の壁に正確な間隔で穿《うが》たれた窓孔がこちらを狙《ねら》っていた。壁と壁のはざまは階段状になっていて、ところどころ関節のような四角い小屋で連結されていた。それらは汽車と平行にゆっくりと走っていた。ある部分がやっと過ぎていくと、また別の同じ形をした部分が現れた。まるで世界の果てまで、それは佐智の汽車を追いかけてくるようだった。  鹿《か》の子斑の山肌《やまはだ》がふいに近づいてきた。汽車は長い歯ぎしりをして止まった。煤煙《ばいえん》の臭《にお》いがどっと吹きこんできたので、入口近くにいる老人があわてて扉を閉めた。しかし数分もたたぬうちに、流暢《りゆうちよう》な日本語が聞こえ扉が外から引き開けられた。黒眼鏡をかけた中国服の男が、ていねいに先の乗客たちに声をかけた。 「申しわけありませんが、少しずつおつめください。ここは××です。一貨車当り十人ずつの帰国者の方がここから乗りこみます」  佐智の近くの復員兵が大声で言った。 「ばかたれ。人の体は簡単に伸び縮みできねえんだよ」  黒眼鏡は動ぜずに静かに続けた。 「足を伸ばしている方は縮めてください。立つほうが楽な方はそうしてください。不要な荷物はここに置いていってください。皆さまの同胞《トンパオ》が乗りこむのです」 「それじゃ、車輛《しやりよう》を増やせ!」  復員兵が怒鳴った。中国人の通訳は黒眼鏡をはずすと、復員兵のほうを片目だけで見た。彼の左目の部分は、肉もろともざっくりえぐれてなかった。復員兵がつばを飲んだ。男は右の目を横に向けて、手を上げた。黙々とした疲れはてた塊りが、いくつも這いあがってきた。彼らは荷物を持っていなかった。凍るような寒気の中で役に立つ上衣《うわぎ》も外套《がいとう》も着ていなかった。子供たちは車に上がるやいなや、針鼠《はりねずみ》のように丸まって眠りはじめた。 「長城を越えて、八路《パールー》軍から逃げてきた方たちです」冷静に黒眼鏡の男が言った。「では皆さま、再見《ツアイチエン》」  扉が閉められて、沈黙がふたたび畜舎の臭いとともに重い霧のように閉じこめられた。人と人との間隔が、肉体的接触に耐えねばならぬところまで来ていたから、かえって言葉は邪魔物としか思えなかった。しだいに佐智は、暗い夢の雰囲気《ふんいき》が近づいてくるのを感じた。復員兵のごつごつした背中が、佐智を押していた。 「息がつまるよう」  佐智は弱々しく言った。母親が訴えるように父親を見た。父親は頭をふったが、それでも体を弓なりにして家族のために少し空間を手に入れた。 「変な臭いで胸が悪くなりそう」  母親が小声で言った。ふいに隅《すみ》のほうで困りきったような女の声がした。