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「なに言ってるの、薬指の第一関節から先がないじゃないの」  事故か何かで本当の薬指の先をなくしてたのなら、私は彼女の表情を、軽い驚きと見たことであろう。事実そのような表情をしていた。だが私にはとてもそうは思えなかった。妖《あや》しげなたくらみがその顔の下にうごめいており、軽い驚きの表情は演技であるとしか思えなかった。  背筋に戦慄《せんりつ》が走った。 「薬指の先がないのが君には見えるのか」 「見えるわよ。わたしはちゃんと目が見えるのよ」 「飯田敬一という男に会ったことがあるか」 「飯田さん……」  邦子はけげんな表情になった。 「それじゃ加藤小吉は。大野志朗は……」 「知らないわ、そんな人たち。いったい誰なの」  窓際で私は邦子の方へ向き直った。 「宇宙人め」  邦子は私の勢いに怯えたのかもしれない。あるいは私の錯覚だったのかも……。  邦子の体が、その姿勢のまますうっと遠のいていった。しかもその遠のき方は、例えば長廊下を一直線に遠のいていったときのようではなく、角度のゆるい階段をうしろ向きに登っていったような感じであった。おまけに、その小さくなり具合の速いことといったらなかった。普通の状態だったら千メートル離れなければ、そんなに小さくはならないはずである。 「来たな、ちくしょうめ」  場所はホテルの部屋である。時間は夜中の三時に近い。大声を出していい時間でも、場所でもなかった。だが私はわめいた。 「いいかげんにしてくれ。来るなら来てもいい。つれていくならつれていってもかまわない。だがこっちにもスケジュールというものがある。せめて、一週間ぐらい前に予告してくれなければ……。いまやられたんじゃ締切りにまにあわない」  すると、邦子は遠いところから、異様に反響する笑い声を送って来た。声はたしかに遠いのだが、すぐ耳元で笑っているように大きくはっきりと聞こえた。
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