ルイヴィトン2012秋冬新作
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null そう言って四人が動こうとした時、光の板はすでに二度目の噴出をはじめていた。  四人は、池を頭に二列に並んで伏せていた。時の動きをひきのばして描写すれば、緑の板はまっすぐ正確にその先頭の二人をすくいあげ、一動作で次の二人も呑みこもうとしていた。  しかし、光の板と先頭の二人の中間に、あの小さな亜空間があった。亜空間は円盤が放つ怪光に同調して、さっきから濃い緑色に輝いていたのだ。  その小さな亜空間に円盤の光の板が当った。同時に円盤に異変が起った。  想像を絶する力で円盤は吹きとばされた。粉砕され、微塵となり、最低単位の粒子に戻って宇宙の涯へ拡散した。  池の傍の亜空間も同時に裂けた。卵を割ったようにふたつに割れ、その間に虚《きよ》が生じた。その虚の裂け目は、全宇宙が要求する均衡への圧力によって、ねじ伏せられるように拡大をとめ、収縮し、消滅しようとした。  四人はその虚の裂け目のすぐ傍にいた。  裂け目が生じ、まだ宇宙の圧力にさからって拡大を続けていた短い時間のうちに、四人は影響を蒙った。まきこまれた。  四人は巨大な爆発の中心部からはねとばされたように感じた。虚空《こくう》をどこまでも遠ざかって行く。膨張する宇宙のそれのように、相互の距離は無限に遠ざかり、耐えがたい孤独の中でおのれの生をみつめていた。  が、その拡散の感覚は、同時に落下の感覚でもあった。粗雑に肥大した風船のような自己が、際限もなく収縮し、相互の距離を無限につめながら落下して行く。  前にうしろがあり、うしろに前があった。そこでは時間流が気ままに渦まいており、未来は同時に過去であり、過去ははてしもない行手であった。  星が生れる前に死んだ。時がバラバラに分散し、無秩序なかたまりとなって澱《よど》んでいる。山本麟太郎は母にいだかれる幼児となり、その時吉永佐一は年上の女と結婚して睦《むつ》み合っていた。三波伸夫は老いた妻の墓前にぬかずき、恐怖にとらわれた伊東五郎は目をとじて芝生の上に這っていた。  時がめまぐるしく入り混った。生まれ、生き、死に、悩み、うたい、恋をして、とほうもない転落をつづけている。  その中で、たまたま現在と現在が重なるとき、彼らはめいめいにそう考えた。  山本麟太郎。 「これが真実の次元移動か。今にこれでハード・SFの傑作をものしてやるぞ……」  吉永佐一。 「莫迦にしやがって、スペ・オペじゃねえか」