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2015-02-05 17:15    十四代定価販売
 と言って、表に気をかねてお玉さんは黙った。表はそんなとき不機嫌にしていた。そして午後三時ごろになると表はやけな調子で、 「もう三時だ。散歩の時間だ。かえろう君。」  と、表は嫉《や》け気味な皮肉を言って出てゆくのであった。まだ十七になったばかりのお玉さんは、何か言いたいような可憐《かれん》な寂しい目をして送っていた。表が此処でビールをのんでもいつもお玉さんが家の前をとりつくろうてくれて払わせなかった。  私はお玉さんが非常に表を愛していると思った。あのおどおどした目つきが、いつもの表の一挙一動毎《ごと》にはらはらしているさまが見えたからである。そしてああいう可憐な娘にはいつも非常に愛される質《たち》を彼はもっていた。やり放しのようで、それでいて、いつも深い計画のもとに働くのは表の巧みな、女にとり入る術であった。  ある日のこと、表の不在中、警察から高等刑事が来て、表の平常の生活を調べて行ったりした。そして巡査がやって来て、夜あまり外出させてはいけないと母親に言って行ったと、あとで表は笑いながら言っていた。けれども表はやはり縁日や公園へ行ってはお玉さんを誘い出したりして、永く夜露に打たれたり、更けて帰ったりしていた。  ある日、表をたずねると、かれはすこし蒼《あお》いむくんだような顔をしていた。そして、 「君、僕はやられたらしい。」と私に言った。 「肺かね。しかし君はからだが丈夫だから何んでもないよ。気のせいだ。」というと、 「そうかなあ——」  そして私どもはよくお玉さんのところへ出かけた。もう私はビールの味を知っていた。私どもにお玉さんを加えて、時時黙って永い間坐っていることがあった。そんなときは、きっと表がお玉さんと二人きりで話したいという心になっていることが、私にももう判るようになっていた。  そんなとき、私だけはさきにかえった。お玉さんは坂の上まで送って来たりした。 「またいらしてくださいましなね。」 「ありがとう。表はからだをわるくしているようだから、ビールをあまりすすめない方がいいね。」 「ええ。私もすこし変に思っていますの。時時厭《いや》な咳《せき》をなさいますもの。」 「だいじにしてお上げ。さよなら。」 「さよなら。」と別れた。  そういう日は、表は黙って拝むような目を私にしていた。私はなぜだか表の弱弱しい一面が好きであった。あの大胆な女たらしのような男に、何ともいえない柔らかい微妙な優しさがあるのを私は恋に近い感情をもって接していた。私は晩など、お玉さんによく握られたらしい彼の手を強く握ったものであった。柔らかいしかし大きい手であった。  私はかれの病気は真正の肺であることを疑わなかった。頬がだんだんに赤みを帯びて来るのが不自然であり、その徴候でもあるらしく思った。