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 何が気に食わないのか、とにかく幹也は不満そうに独り言を繰り返す。  ……橙子師の情報源の一人がうちの大輔さんだったっていうのは、まあ有り得る話だと思う。大輔さんは捜査一課でもアウトローな人だから、橙子師みたいな人と情報交換をしていてもおかしくはない。 「いいや、話を戻すよ。それで葉山英雄についてだけど、鮮花はどのくらい知ってるんだ?」  幹也の声には、こちらの心情を探る気配が感じられた。  ……そういった表に出ない心遣いをよく知っているわたしは、彼が何を危倶しているか瞬時に理解できた。 「大丈夫、心配は無用です。わたし、大抵の事には驚きません。葉山英雄っていう教諭がどんな人間だったかは知っているつもりですから」  そうか、と受話器の向こうで呟く声がした。  幹也は少しためらってから、じゃあ、と断って話をはじめる。 「———率直に言うとね、葉山英雄は礼園の生徒たちに援助交際をさせていたみたいだ。彼の担任していたクラスの生徒を外に連れ出して、そういう事をさせていたらしい」 「————え?」  あまりに突拍子もない言葉に、わたしはそんなリアクションしかとれなかった。  幹也はわたしの動揺をあえて無視して、一気に真実を報告してくる。 「実際に何をさせていたかは判らない。ただ、礼園の生徒っていう希少価値を活かすぐらいだから、あまり込み入った事はさせていなかっただろう。値をあげるなら、出し惜しみをするものだからね。生徒を外に連れ出すのも週に二回ほどで、数人しか連れ出さなかったらしい。大胆なのか慎重なのかどっちともつかない事だけど、葉山英雄はうまくやっていたんだろう。  もともと彼は繁華街では有名でね、派手な遊び人を気取っていたっていう話だ。その遊びも日に日に度を超えてきて、多額の借金を負ってる。そっち系統の飲み屋には大抵スポンサーがついていて、まあ、ようするに暴力団って言われる人達なんだけど、葉山はそういう連中に借金をしていた事になる。返済を迫られ、進退窮まった葉山英雄は疎遠にしていた兄を頼って礼園に教師として採用された。  真面目に働いて借金を返す、という名目で兄を説得したんだろうけど、どうも葉山英雄は初めから礼園の生徒を連れ出して遊ばせるのが目的だったみたいだ。  ……解るだろ。礼園の生徒っていうのは、名門女子校って事以外にも価値はあるんだ。大抵が資産家の一人娘だからさ、葉山英雄をせっついていた連中も何かと役にたつと考えたんだ。それとも、初めから目的である生徒は一人だけだったのかもしれない。そのあたりはまだ不明だけど、とにかく葉山も暴力団も味をしめてしまって、九月ごろまでには一年四組の生徒のほぼ全員が外に連れ出されている。  とりあえず、大まかな本筋はこんなところ」  そうして、幹也は葉山が連れ出していった生徒達の名前やその順番、日付、帰宅時間まで一つ一つ報告してくれた。
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