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2015-02-07 13:52    ルイヴィトンヴェルニ鞄
 けれども、野球帽を顔にのせて野放図《のほうず》に寝ころんでいる亜左美に、誘惑の底意《そこい》は感じられない。それとも、この野放図さも、男の目を意識した一種の媚態《びたい》なのだろうか。  いや、それは勘ぐりすぎというものだろう。  いま彼女が口にしたきわどい言葉は、むしろ榊のまじめ面《づら》への失敬な皮肉と受け取るべきだろう。それ以上の意味はないのだろう。そこで、榊も軽口の応酬《おうしゆう》として、ぶっきらぼうに言い返した。 「きみなんかに、そんなところを見せるわけにはいかんよ」  言い返しながら、しかしこれまでに病院の中でときおり亜左美が見せた、あきらかな媚態のいくつかをふと思い出したりもして、〈セクシャルな交代人格〉という岐戸医師の言葉が意識の隅にひっかかった。ああいうときの亜左美は、たしかに誘惑的だった。 〈あの誘惑は、わたしに対するテストだったのか、それとも本心からの誘いだったのか、その判別はつきませんでしたが、しかし、いずれにしても、わたしがそれに応じていれば、その瞬間から治療関係が崩壊《ほうかい》したことは間違いない。一匹の雄《おす》でしかない医者に幻滅《げんめつ》して離れてゆくか、あるいは、愛人気取りでまとわりつくか、どちらの場合でも、もう治療関係は成立しなくなってしまったはずです〉 「ねえ、先生」  とまた亜左美が帽子の下から言った。 「なんだ」 「広瀬先生がいなくて淋しい?」  広瀬由起は、復帰の予定もまだ連絡してこない。 「どうしてるのか気にはなっている」 「早く戻ってきてほしい?」 「優秀な心理士さんだからね」 「ずいぶん仲良くしてたしね。誰もいない場所でこっそり会ったり」  油断のならない少女だ、と榊はあらためて思った。かれと広瀬由起がときどき人目を避けて話し合いをしていたことを、しっかり観察していたようだ。話し合いの内容が、亜左美自身の多重人格診断についてだということまでは知らないはずだが……。