ルイヴィトンダミエグラフィットセカンドバック
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null この少年は、うねる海をみると気分がわるくなるのだ。 「そうか。では、わたしにかまわずやすんでいるがいい。」  ルィンは、正直にうれしそうな顔をした。 「ありがとうございます。そうさせていただきます。」  チャグムはルィンをあとに残し、トーサにみちびかれて甲板にのぼった。  甲板にでたとたん、満天の星空につつまれた。  これまでも、いくどか、日が暮れてから甲板にでたことはあったが、これほど晴れた夜ははじめてだった。満月にちかくみちた月は、まぶしいほどの白い光であたりをてらし、甲板は一面、霜がおりたようにあわくうかびあがっている。  多くの海士たちが、船端《ふなばた》に身をのりだすようにして、なにかをながめている。興奮したざわめきが、潮風にのってつたわってきた。 「こちらへ。」  トーサは、チャグムを、海士たちのいない上甲板へとみちびいた。  微笑をうかべて、トーサは海を手でしめした。海をみおろして、チャグムは息をのんだ。  船をとりまく海が、緑がかった青色にかがやいている。海中に青白い火が燃えているような、ふしぎな光だった。  青緑の光は、船のわきをうねりながらなめ、小さな波がくだけるたびに、ひときわ明るくかがやいた。船の航跡も、光の帯のようにたなびいてみえる。  よくみると、暗い海のあちらこちらに、小さな火の玉が、青白い光の尾を引いているのがみえた。まるで、海のなかを、いくつもの流れ星がながれているようだ。  うつくしいけれど、どこかおそろしい光景だった。 「いったい、この光は……。」  チャグムがつぶやくと、トーサがささやいた。 「夜光砂虫です。これほどの大群はめずらしい。」