激安louis vuittonルイヴィトンダミエグラフィット_beck paper tiger|どのように買ってlouis vuittonルイヴィトンダミエグラフィット louis vuittonルイヴィトンダミエグラフィット公式ページのURL outlet!


2015-02-18 17:06    louis vuittonルイヴィトンダミエグラフィット
 高次は必死に救命船の綱を締めながら、もし日本人だけで、この咸臨丸を航海させていたら、いまごろは嵐の海に沈んで御陀仏《おだぶつ》だったと肝を冷やした。本心をいえば水夫部屋に逃げ帰り、頭から布団をかぶって寝ていたかった。だが懸命に働く万次郎とアメリカ人海兵を見ていると、日本人の面子《メンツ》にかけても嵐に立ち向かわねばならない。  高次は海水を頭から浴びながら、やっとのことで仕事を終えた。甲板を這って万次郎のいる操舵室ににじり寄り、扉を開けた。 「万次郎さん。バッテラが波に流されぬように、舳先《へさき》と艫《とも》(船尾)の縄を、四重に結びました」 「それはようやった」  びしょ濡れの高次は海水を吐き飛ばして、防水帽子をとった。高次の顔は黒く汐焼《しおや》けしたあばた面である。濃い眉《まゆ》と大きな眼、ぶ厚い唇のいかつい顔だが、笑うと目元に笑い皺《じわ》ができて愛嬌《あいきよう》がある。 「つぎの仕事がある。わしについてこい」 「そのまえに万次郎さん。腹が減りました。なにか食い物はないですかのう」  嵐の中で仕事を成し遂げた満足感からか、急に高次は空腹を覚えた。 「腹が減ったなら、この餅《もち》を食うちょけ。しばらくは腹の足しになるきに」 「ありがたい。こげな寒いうえに、腹が減っては辛抱たまらんです。それでつぎの仕事はなんですか」 「ここからサンフランシスコまで九千七百マイルもある。嵐の海を乗り切るために、アメリカ人で当直を二直制にして、ブルック船長が指揮をとらねば咸臨丸は沈没する。そのことを勝艦長に伝えるんじゃ。そのあとで働ける日本人水夫を探さねばならん」  いま現実に咸臨丸の指揮をとっているのはブルックだが、咸臨丸を嵐から守るために、アメリカ海軍の規律として、一時的な指揮権の交替の許可を、形だけでも艦長の勝からうけねばならないと万次郎は説明した。  高次は固くなった餅を噛《か》みしめながら、万次郎の後につづいた。  高次は二十一歳のとき、長崎の海軍伝習所の水夫に選ばれて、都合二回にわたって洋式軍艦をオランダ人から二年間学んだ。子供のころから海に出ていた高次は、長崎の海軍伝習所でさらに大きな航海への自信をもったが、冬の太平洋の荒れ方は桁違《けたちが》いであった。  太平洋を熟知しているブルックでさえ、出港をためらった真冬の太平洋である。夏は海から心地よい黒南風《くろはえ》の順風が吹き込む日本の太平洋岸も、冬は猛烈な北西風が吹き荒れて、南極に近い|吠える四十度《ローリング・フオーテイ》(緯度)、南米大陸南端の|荒れ狂うホーン岬《クレージイ・ホーン》とともに、世界中の船乗りに恐れられた海の難所である。  その真冬の太平洋に乗り出した日本人乗組員は、たちまち船酔いで総倒れになった。高次も七転八倒の苦しみを味わったが、二日目でどうにか立ち直った。そのとき両刀を差した侍姿の万次郎を見た。万次郎は咸臨丸の航海士官でもないのに、船酔いした日本人水夫の部屋を覗《のぞ》き、大声で職務を遂行せよと命令している。万次郎のことをよく知らない高次は、一方的に命令する万次郎に強い怒りを覚えた。 「アメリカ人の手先になりおった日本人めが。覚えておれよ」