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2015-02-18 18:08    ルイヴィトンモノグラム種類
 そんな若者たちの中で、ミンだけは全身麻酔の機械が扱え、下肢切断の手術助手も務められる稀有《けう》な存在だった。彼はプノンペン大学の医学生で、父親もその大学の教授だった。ミンが学部の四年生だった四月のある日、父は研究室から姿を消し行方不明になった。家にもどると、母と三人の妹たちも風のように消えていた。ミンは黒服の兵士たちに連行されて、バッタンバン州の田園地帯に強制移住させられ、毎朝六時から夜十時まで水路の石垣積みに狩り出された。自分の周囲から学歴の高い者たちが次々と姿を消していくのを見て、父や母たちの運命を知った。ミンは医学生仲間の二人と逃亡を計った。国境のジャングル地帯で一人が射殺され、ようやくタイ領に逃げ込んだとき、一人が地雷に触れて肉片になった。  種村が来たとき、ミンは収容所に入ってすでに一年半を経ており、ここで結婚した妻との間に生後三ヶ月になる女児がいた。  当直当番の夕方、散歩がてらに収容所の中を歩いていると、赤土の道に面した難民の家から声をかける者がいた。ミンだった。誘われるままに狭い庭に入ると、彫りの深い顔をした美人の妻が、ニラの雑炊を石造りのかまどで炊いていた。  乏しい配給米の中から一膳の雑炊を分けてもらうのは心苦しかった。しかし、赤ん坊を胸に抱えてアルマイトの椀《わん》を差し出すミンの妻は、種村が固辞すればするほど黒く大きく瞳を見開き、涙さえ見せた。そして、そんな光景から顔をそむけるように、キュウリのツルがからまる軒下にうずくまるミンの骨の浮いた裸の身が、もうそれくらいにしてくれ、と言いたげに震えていた。種村は合掌して雑炊の椀を受けた。  カンボジア平原に沈む巨大な夕陽を浴び、赤土の庭にすわり込んで雑炊をすすりながら、ミンとその妻は種村に日本のことを質問した。彼らはフランス語の会話の方がはるかに得意らしかったが、種村の下手な英語に合わせてくれた。  種村は漠然とした「日本」について語る代わりに、自分がここに来た理由を話した。貴重な雑炊の礼として、できるだけ素直に最初の動機を語ろうとした結果、彼の英語は中学生の英作文のようなものになった。  ——私は信州という山の多い土地で生まれ、育った。両親は農民である。兄が一人いて、彼もまた農業をやっている。私は看護士として村の病院に勤めている。十年勤めている。退屈な十年だった。趣味はとくにないが、夜、家の近くに建設された大きな電波望遠鏡のパラボラアンテナを見るのが好きだった。星に興味はないが、夜空の語る声を聞こうとしている巨人の耳のようなパラボラアンテナを見ていると、こんな山の中で老いていくだけの人生はつまらない、と思った。どこか外国へ行き、そこでも人間が生きているのだ、ということを確かめたかった。看護雑誌に載っていたボランティアの募集に応募し、ここに来た。あなたたちには申し訳ないけれど、カンボジアのことはよく知らない。私が来たかったから来た。それだけです。—— 「ニホンは寒いのですか」  ミンの妻が椀に湯を注ぎながら、不安気な目をした。  種村は、冬になると山の上の湖に氷が張り、そこに穴を開けて釣りができる、と話した。夕陽が沈みかける時刻にも気温が三十五度を下らない土地で口にすると、よくできたホラ話のようだった。ミンは肩をすくめて、エスキモーだね、と笑った。 「オオサカもそんなに寒いのかな」  ミンは椀の湯を一気に飲み干すと、急に真顔になった。 「大阪は行ったことがないけれど、湖に氷は張らないと思う」  種村が歯にはさまったニラを舌でこそげ落としながら言うと、ミンと妻は、That's good. とうなずき合った。  松林の上の月が半分まで欠けた。発泡スチロールの板を氷の上に敷き、向い合って座ったミンと種村は極端に背を丸め、それぞれの竿の先を見つめていた。  塩化ビニールのパイプを裂き、ヤスリで細く削った手製の竿は、ときおり松林の闇を吹き抜けてくる微風を受けて大袈裟にしなった。そのたびに、ミンが人なつっこい頬笑みを浮かべてあわせをくれ、糸をたぐるのだが、目的のワカサギは一匹もついていなかった。 「また風を釣ってしまった」