ルイヴィトン・モノグラム アーツィーmm
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null「どんな男だった?」  田島は舟橋の問いを聞き流した。舟橋は乾いた唇を舐《な》めた。 「それが二人連れでしてな。一人は目だたない地味な服装をして、いかにも刑事らしい人でしたが、もう一人の刑事さんは、金目のかかったスカッとした服を着ているのに、何だかまともな方とは思われませんでしたよ。ボストンバッグを持っている左の小指の先がプッツリ切れていて、頬には切り傷までありまして……」目を落着きなく動かしながら、ベラベラ早口でしゃべる。 「蝮の政だな」  田島は低い声で呟いた。 「何とおっしゃいました」 「何でもない。ところで美知子の殺された晩のことだが……」田島は管理人を凝視しながら言った。 「へ、へい。それはですな——」舟橋は頬をひきつらしてしきりに揉み手した。 「あの晩六時頃電話がかかってきまして、奥様に取りつぎました」  田島の瞳はキラリと光ったが、唇は物憂い微笑を作った。 「ふーん、男から女から? どんなことを言ってた?」 「男の方からでした。しかし、お話の内容は私どもは聞いてはならぬことになってますので」 「どんなことを言ってきたかと聞いてるんだ」 「えー、私としましては、盗み聞くなんて気は一切無かったわけですが、唯ついレシーバーを外すのを……」  舟橋の揉み手が忙しくなってきた。唇に卑屈な愛想笑いを浮べて上目で田島をうかがう。 「弁解はいいから、何と言ってた?」  田島の目は細められ、声は冷たい。 「へえ、“美知子か? すぐ来てくれ”とだけ言うと、すぐガシャンと切れました」